広告は出稿している。商品力にも一定の自信がある。レビューもゼロではない。
それでも、売上が思うように伸びない——EC事業に携わっている方なら、こうした壁に一度はぶつかったことがあるはずです。
私たちも、クライアントのEC事業支援を行う中で何度もこの問題に向き合ってきました。そして気づいたのは、問題の多くが「施策」にあるのではなく、消費者の購買構造そのものを見誤っていることにあるということでした。
株式会社スポルアップでは、EC事業支援と市場調査の両軸で購買データの分析を続けてきましたが、今回実施した最新の調査(n=6,000)では、EC市場がすでに成熟フェーズに入り、消費者の意思決定が驚くほど明確なパターンに収束していることが見えてきました。
この記事では、その調査結果をもとに「なぜ売れないのか」「どうすれば売れるのか」を、実務者の視点で掘り下げていきます。
ECはもはや”特別なもの”ではなくなった
直近3ヶ月のEC利用率は63.4%。この数字が何を意味するか、少し立ち止まって考えてみてください。
ほんの数年前まで、ECといえば「若い人が安いものを買う場所」くらいの認識が一般的でした。使うカテゴリも限られていたし、「ネットで買い物をする人」はどこか少数派のイメージがあったかもしれません。
ところが今は、年齢を問わず利用され、日用品や食品にまで浸透し、多くの人にとって生活の一部になっています。もう「ECを使うかどうか」という段階はとっくに過ぎていて、買い物のインフラとして当たり前に存在している。それが現在の常識です。

ECビジネスの戦場はすでに決まっている
ECの構造を語るうえで避けて通れないのが、プラットフォームの寡占です。
今回の調査でも、Amazonが38.8%、楽天市場が37.6%と、この2つだけで76%以上のシェアを占めていました。正直、わかっていたことではありますが、改めて数字で見ると「どこで売るか」の議論がほぼ終わっていることを実感します。
企業同士の競争は、チャネル選びの段階ではなく、同じプラットフォームの中でどう勝つかというフェーズに完全に移っている。ここを前提にしないと、戦略の組み立て自体がずれてしまいます。

消費者は結局、何を見て買っているのか
ここからが本題です。
同じプラットフォーム上で、消費者はどうやって商品を選んでいるのか。データと実務の両面から見て、私たちがたどり着いた結論は「購買は2段階の構造で決まる」というものでした。
ひとことで言えば、価格で候補に入り、レビューで最終決定する。この流れです。
まず「価格」で、比較の土俵に残れるかが決まる
購入時に最も重視する要素を聞いたところ、「価格」が55%でトップ。さらに、節約を意識しているという回答は77.2%にのぼりました。
ただ、ここで誤解してほしくないのは「とにかく安ければいい」という話ではないということです。ECでは、ユーザーは必ず複数の商品を並べて比較します。同じような商品、似たスペック、似たレビュー——その中で、価格が明らかに高いとそもそも検討の対象に入れてもらえません。
つまり価格は「安さ」の問題ではなく、「比較の土俵に残れるかどうか」の問題ということです。土俵に残れなければ、どれだけ商品が良くても見てもらえない。この点は思った以上にシビアです。

そして「レビュー」が、最後の一押しになる
購入前にレビューを確認する人は82%。もはや「参考にする」とか「補足的に見る」というレベルではなく、レビューそのものが購入の意思決定を左右しているといっていい状態です。
なぜレビューがここまで強いのか。理由はシンプルで、ECには「実物を手に取れない」「試してから買えない」「返品にも手間がかかる」という構造的な不安がつきまとうからです。その不安を埋めてくれるのが、他の購入者のリアルな体験談——つまりレビューです。
そして重要なのは、星の数が高ければいいという単純な話ではないこと。使っているシーンが想像できるか、写真があるか、書いている人が信頼できそうか。要するに、読んだ人が「買った後の自分」をイメージできるかどうか。この”疑似体験”の質が、CVR(コンバージョン率)を大きく左右します。

セグメントによって、打ち手はまるで変わる
消費者をひとくくりにしても戦略は立てられません。今回の調査では、ユーザーは大きく3つのタイプに分かれることが見えてきました。

価格重視層はボリュームが最も大きく、節約意識が強くて必ず比較をする。レビューへの依存度も高い層です。この層には、価格設計の精度と「比較されたときに選ばれる理由」の明確化が欠かせません。
SNS影響層は、タイムラインで偶然見つけた商品から購買につながるタイプ。UGC(ユーザー生成コンテンツ)との親和性が高いので、動画コンテンツとレビューを連動させた設計が効きます。
自己決定型は、自分でじっく調査では、ユーザーは大きく以下に分かれます。
「ECは若者のもの」はもう古い
もうひとつ、見落とされがちなポイントがあります。
EC利用率を地域別に見ると、都市部は約70%に対して地方は50%台。最大で20ポイント近い差があります。また年代別では、30代で利用が一気に増え、実は50代がピークになっています。
この結果は「EC=若者市場」というイメージを完全に覆すものです。ターゲティングや広告配信の前提を、改めて見直す必要があるかもしれません。


EC事業に取り組む企業は具体的に何をすればいいのか
ここまでの話を踏まえて、やるべきことを整理します。
第一に、価格設計。
絶対的な安さではなく、比較されたときに「この価格なら納得できる」と思ってもらえる水準に置けているかどうか。ここがスタートラインです。
第二に、レビュー戦略。
正直なところ、これが最もCVRに直結します。レビューの量を増やすだけでなく、質の高いレビュー(写真付き、具体的な使用感、信頼性のある投稿者)をいかに蓄積できるか。ここに本気で取り組めている企業は、まだそう多くありません。
第三に、チャネルの役割分担。
Amazon、楽天、自社ECのそれぞれに異なる役割を持たせ、全体として最適化する設計が必要です。全部同じやり方で出店しているだけでは、どこかで頭打ちになります。
実際に、スポルアップが支援するEC事業の現場でも、この3つの設計を見直しただけで成果が大きく変わるケースを数多く見てきました。
ECは”構造”で勝つ時代に入った
データ分析やフレームワークに基づく施策を積み重ねるだけでは、もうECでは勝てません。大切なのは、「誰に」「何を」「どう見せるか」という構造そのものを設計すること。その土台がなければ、どんな施策も空回りしてしまいます。
当社では、こうした購買構造の分析をもとに、企業ごとのEC戦略設計と改善支援を行っています。「なんとなく売れない」を「構造的に売れる」に変えたい方は、ぜひ一度ご相談ください。
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調査概要
調査対象:6,000名(男性 3,000 / 女性 3,000)※6年代×2性別×500サンプル
調査期間:2026年3月18日 〜 3月30日
対象エリア・属性:全国 15歳〜99歳 男女
