「推しのため」は、実は「自分のため」だった。

「推し活」「応援消費」という言葉が、すっかり定着しました。

好きなアーティスト、キャラクター、スポーツチーム、あるいは地元のお店。誰かや何かを「応援したい」という気持ちが、消費を動かしています。

当社(株式会社スポルアップ)は、この「応援消費」の実態を捉えるため、ECアクティブユーザー500名を対象とした本調査を実施しました。前回調査「自分へのご褒美EC」が“自分のための消費”を扱ったのに対し、今回は“誰かのための消費”がテーマです。

そこで見えてきたのは、「応援」という利他的に見える行為の根っこに、「自分が幸せになりたい」という自己充足の動機がある、という構造でした。本記事では、当社調査データと消費者の“生の声”(自由記述)をもとに、応援消費のリアルと、EC事業者・ブランドが取るべき方向性を整理します。

目次

EC利用者の45%に「応援したい対象・推し」がいる

「お金を使って応援したいと思う対象や『推し』はいますか」と尋ねたところ、いずれかの対象を挙げた人は45.0%でした。

EC利用者の45.0%に応援したい対象・推しがいる。内訳はアイドル18.8%等
図:応援したい対象・推しの有無と内訳(n=500・当社調査)

内訳は、アイドル・アニメキャラ・VTuber・俳優などの「推し活層」が31.4%、スポーツ・ブランド・地元地域・企業などの「広義の応援層」が25.4%(両者は一部重複)。対象別ではアイドル・アーティスト(18.8%)、アニメ・漫画・ゲームのキャラクター(16.2%)、スポーツ選手・チーム(14.8%)が上位でした。

年代で「対象の質」が分かれる

年代別の応援対象保有率。20代63.2%から60代以上31.0%へ低下、30-40代で急落
図:年代別 応援対象の保有率(n=491・当社調査)※10代(n=9)は除外

応援対象の保有率は、20代63.2%、30代60.0%、40代39.6%、50代38.3%、60代以上31.0%。30代から40代にかけて大きく低下します。

興味深いのは、年代で応援する対象の種類も変わることです。若年層はアイドル・アニメキャラといった「推し」が中心。一方、シニア層はスポーツ・地元地域・企業といった「応援」が中心で、60代以上の応援対象トップは「地元・地域」でした。「推し活」と「地域・スポーツ応援」は、同じ応援消費でも世代で棲み分けられています。

応援している人の8割が支出。でも月3,000円未満が中心

応援・推しへの月額支出。応援対象がいる人の80%が支出、最多は1000-3000円未満28%
図:応援・推しのための1ヶ月の支出額(n=225・当社調査)

応援対象がいる人のうち、80.0%が実際にお金を使っています(0円は20.0%)。ただし金額帯は「1,000〜3,000円未満」が最多の28.0%。5,000円以上は22.2%、1万円以上は11.1%にとどまります。

「推し活=青天井の散財」というイメージがありますが、実態は月数千円の範囲で堅実に楽しむ層が中心です。前回調査「自分へのご褒美EC」(5千円以下が61%)と比べても、応援消費はより小口の傾向でした。

使い道は「モノ」中心。でも“よかった”の源泉は「体験」

応援・推しの使い道。グッズ60.6%、CD・DVD45%、ライブ37.8%
図:応援・推しのための使い道(n=180・実支出者・当社調査)

使い道(複数回答)は、「グッズ・関連商品」60.6%、「CD・DVD・Blu-ray・書籍・写真集」45.0%、「ライブ・イベント・試合の参加」37.8%が上位。支出としては「モノ」が中心です。

ところが、自由記述で「よかった経験」を尋ねると、最も多かったのはライブや現地観戦などの“体験”にまつわる声でした。お金は「モノ」に向かうのに、記憶に残る満足は「体験・思い出」に集中しているのです。

「初めてライブに参戦し、一生ついていきたいと改めて感じた」
「共通の“推し”を持つ人ととても仲良くなり、一体感を感じられた」
「“お金を使って良かった”というより、“良かったからお金を使う”感覚」

本調査 自由記述より(一部・一般化して掲載)

「推しのため」でも、動機トップは「自分が幸せ」

応援消費で大切にしている気持ち。自分が幸せ56.9%が貢献したい37.8%を上回る
図:応援消費で大切にしている気持ち(n=225・当社調査)

本調査で最も示唆的だったのが、この結果です。応援消費で大切にしている気持ち(複数回答)の1位は「自分自身が元気・幸せになれる56.9%。「応援対象に貢献したい・力になりたい」(37.8%)を大きく上回りました。

「応援」は一見、相手のための利他的な行為です。しかしその動機の中心にあるのは、自分の幸福でした。これは前回調査「自分へのご褒美EC」で見えた自己充足の消費心理と、まったく同じ方向を向いています。“自分のためのご褒美”も、“誰かのための応援”も、根っこにあるのは「自分の心を満たしたい」という共通の欲求です。

“譲れない”はグッズとライブ、“我慢”は遠征と日常費

応援消費のメリハリ。譲れない=グッズ・ライブ、我慢=遠征・交通費・日常費
図:自由記述に見る「応援消費のメリハリ」(当社調査・一般化して掲載)

自由記述で「これだけは譲れない支出/逆に我慢していること」を尋ねると、応援消費におけるメリハリがくっきりと浮かびました。譲れないのはグッズ・円盤・ライブチケット・音楽サブスク。我慢しているのは遠征・交通費・宿泊で、食費・外食など日常の支出を切り詰めて応援に回す姿が見えます。

「ライブに行くことは譲れない。交通費は節約しています」
「日々の飲食代は安くなるよう努力している」
「毎月の上限額を決めて、それ以上は我慢している」
「チケットだけでは(推しの)売上にならないと分かっているので、グッズは必ず買う」

本調査 自由記述より(一部・一般化して掲載)

前回調査で見えた「節約と自分への支出の両立」は、応援消費でも一貫していました。応援消費は無計画な散財ではなく、優先順位を明確につけた「メリハリ消費」なのです。

本調査が示す「応援消費の3原則」

① 自己充足 — 応援は「自分のため」でもある

動機トップは「自分が幸せになれる」(56.9%)。応援は利他であると同時に、自分の心を満たす行為です。「応援させてもらって幸せ」という感覚が中心にあります。

② 体験価値 — 満足は「モノ」より「体験」に宿る

支出はグッズ中心(60.6%)ですが、“よかった”の記憶はライブ・現地観戦などの体験に集中しています。モノは体験の記憶を呼び起こす「よすが」として機能しています。

③ メリハリ — 譲れないものを守り、それ以外は削る

主戦場は月3,000円未満。譲れないもの(グッズ・ライブ)は守り、遠征や日常費は削る。応援消費は堅実な家計運営の中で営まれています。

EC事業者・ブランドにとっての実務示唆

① 「応援したくなる」=「自分が満たされる」文脈を設計する

応援消費の動機は「自分が幸せになれる」。応援が自己肯定・自己表現につながる体験設計(限定感、参加感、貢献の可視化)が、支出を後押しします。

② モノと体験を接続する

満足はライブなどの体験に宿ります。グッズ(モノ)を体験の記憶と結びつける売り方(現地限定、イベント連動、シリアル特典など)が、単なる物販より深く響きます。

③ 小口・継続を前提に設計する

主戦場は月3,000円未満です。高額単発よりも、無理なく続けられる応援導線(サブスク、小口グッズ、積み立て的な仕組み)のほうが、応援消費の実態に合っています。

応援消費は「自分の心を満たす」消費のかたち

「推し活」「応援消費」は、しばしば熱狂的な散財として語られます。しかし本調査が示したのは、もっと静かで、もっと自分に正直な消費の姿でした。人は、誰かを応援することで、自分自身を満たしている——。

前回の「自分へのご褒美」と今回の「応援消費」。“自分のため”と“誰かのため”、一見正反対の消費が、根っこでは同じ「自分の心の充足」につながっている。これが、当社の消費者購買行動シリーズが到達した一つの結論です。

当社(株式会社スポルアップ)では、自社リサーチによる属性別・動機別の購買行動分析、ファン・応援文脈の商品訴求設計、体験と物販を接続する売り場企画支援など、データに基づくEC支援を行っています。「応援したくなる売り方」について、ご相談を承っております。

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  • Q1〜Q4の単純集計(全体・男女別)
  • 年代別のクロス分析グラフ
  • 自由記述(応援の“生の声”)の分類と代表例
  • 「推し活層」と「広義応援層」の比較

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調査・分析のご相談

購買行動分析、ファン・応援文脈の訴求戦略立案、自主企画リサーチの設計など、当社リサーチ部門による調査・分析支援も承っております。

調査概要

  • 調査名:「応援消費(推し活)」に関する調査 2026
  • 調査期間:2026年7月6日
  • 調査対象:全国 ECアクティブユーザー 男女
  • サンプル数:n=500(男性250 / 女性250)
  • 調査方法:インターネット調査(セルフ型アンケートツール「Freeasy」使用)
  • 調査主体:株式会社スポルアップ Research Division
  • ※Q2〜Q6は「応援対象・推しがいる」225名がベース(使い道Q3は実支出者180名)

補助参照データ:EC利用実態調査 2026(予備調査)/2026年3月/全国 15〜99歳 男女/n=6,000

※本記事のグラフ・データはすべて当社が独自に実施した調査に基づくものです。
※自由記述に含まれる固有名詞は、すべて一般化して掲載しています。
※引用の際は出典として「株式会社スポルアップ調べ」を明記してください。

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この記事を書いた人

事業内容:EC支援・マーケティング支援・データ分析

EC領域における実務支援、マーケティング施策の企画・改善、市場調査およびデータ分析を通じて、企業の事業成長を支援しています。実務視点と分析視点の両面から課題を捉え、売上拡大や意思決定の精度向上に貢献します。