物価上昇が続く中、消費者の財布のひもは固くなっています。
当社(株式会社スポルアップ)が2026年3月に実施した予備調査(n=6,000)でも、77.2%が「節約意識が高まっている」と回答しており、消費マインドは明確に引き締め基調にあります。
では、消費者はあらゆる支出を絞っているのでしょうか。
EC支援と市場調査の両面から購買行動を分析してきた当社は、節約の「裏側」にあるポジティブな購買動機を捉えるため、ECアクティブユーザー500名を対象とした本調査を実施しました。
そこで見えてきたのは、「節約はする。それでも、自分へのご褒美は買う」という、メリハリのきいた消費者の姿でした。
本記事では、当社調査データをもとに、「ご褒美EC」の実態と、EC事業者が取るべき訴求設計の方向性を整理します。
節約意識77.2%の「裏側」— 2人に1人がご褒美買い
「『自分へのご褒美』としてECで買い物をした経験はありますか」という設問に対し、「よくある」13.8%、「たまにある」40.4%、合計54.2%——2人に1人がご褒美買いを経験していました。

節約意識が8割近くまで高まる一方で、2人に1人は「自分のため」の支出を続けている——。これが、当社調査が捉えた現在のECユーザーの実態です。締めるところは締め、使うところは使う、いわゆる「メリハリ消費」の構造が、ご褒美ECという形で数字に表れました。
ご褒美経験率 — 若いほど高く、20代は6割超
経験計(よくある+たまにある)は男性52.8% / 女性55.6%と男女差は小さい一方、年代別では明確な傾向が見られました。

| 年代 | n | 経験計 |
|---|---|---|
| 20代 | 40 | 62.5%(全体比 +8.3pt) |
| 30代 | 94 | 61.7% |
| 40代 | 136 | 56.6% |
| 50代 | 122 | 50.0% |
| 60代以上 | 103 | 43.7%(全体比 -10.5pt) |
20代から60代以上まで、年代が上がるほど経験率がきれいに低下しています。「ご褒美消費」「セルフケア消費」という言葉が若年層のSNSを中心に広がっていることとも整合する結果であり、若い世代ほど「自分のために買う」ことへの心理的ハードルが低いと考えられます。
ご褒美の中身 — 1位は全年代共通「スイーツ・グルメ」
ご褒美として買うジャンル(複数回答)の上位は以下の通りです。
※以降の設問は、ご褒美買い経験が「まったくない」と回答した89名を除く411名がベースです。

| 順位 | ジャンル | 回答率 |
|---|---|---|
| 1位 | スイーツ・グルメ | 47.9% |
| 2位 | ファッション・アクセサリー | 31.6% |
| 3位 | コスメ・美容 | 25.8% |
| 4位 | 趣味のモノ(DVD・フィギュア・グッズ) | 24.1% |
| 5位 | 本・マンガ・ゲーム | 21.2% |
スイーツ・グルメは、20代から60代以上まで全年代で1位。「ご褒美=ちょっと良いものを食べる」は、世代を超えた共通行動であることが分かりました。
一方、性別で見ると対象はまったく異なります。コスメ・美容は女性37.7%に対し男性13.1%、家電・ガジェットは男性26.6%に対し女性7.5%、趣味のモノは男性31.7%に対し女性17.0%。「何をご褒美にするか」は性別で別物であり、訴求は分けて設計すべきと言えます。
ご褒美は圧倒的に「モノ」— コト消費言説への反証
ジャンルを「モノ系」(食品・コスメ・ファッション・家電・趣味のモノ・本等)と「体験系」(推し・エンタメ体験、旅行・レジャー)に分けて当社が独自集計したところ、次の構造が見えました。

マーケティング業界では長らく「モノ消費からコト消費へ」という潮流が語られてきました。しかし、こと”自分へのご褒美”に関しては、モノ系92.7%に対し体験系23.4%と、モノが圧倒的な主役です。「体験だけをご褒美にする」人は4.9%——約20人に1人にとどまりました。
体験系は単独ではなく「モノと併用」される(18.5%)ことが多く、体験消費はご褒美の”追加レイヤー”として機能していると解釈できます。
いつ買うのか — ご褒美は「日常」になっている

最多は「決まっていない/日常的」44.3%。「仕事を頑張った時」29.4%、「給料日・ボーナス」25.6%を上回りました。
「ご褒美」という言葉からは、給料日・ボーナス・記念日といった「ハレの日」を想起しがちです。しかし実態は、特別なイベントを待たず、日常生活の中で気軽に行われるセルフケアに近い行動になっています。
「頑張った時」(29.4%)=達成報酬型と、「落ち込んだ時」(17.8%)=気分転換型の両方が一定数存在することも注目に値します。ご褒美ECは「ポジティブな時もネガティブな時も使われる」感情の調整装置として機能していると考えられます。
いくら使うのか — 主流は「5千円以下のプチ贅沢」

最多は「〜5千円」28.0%で、5千円以下の合計は61.1%。ご褒美消費の主流は、数千円規模の「プチ贅沢」であることが分かりました。
一方で「1万円より上」も20.2%存在します。ご褒美ECには「日常のプチ贅沢層」(〜5千円・約6割)と「大きな自己投資層」(1万円超・約2割)という二つの山があり、商材単価によって狙うべき層が異なる構造です。
買った後どうか — ご褒美買いは、ほとんど後悔されない

満足計は78.3%(満足31.4%+やや満足47.0%)。「やや後悔」「後悔」は合わせてもわずか1.0%(4名)でした。
当社の前回調査(ECレビュー信頼性調査)では、レビューへの不信から購入を断念した経験者が65.4%にのぼるなど、EC購買の「疑い・迷い」が浮き彫りになりました。本調査の結果はその対極にあります。
他人の評価(レビュー)を頼りに買う買い物は「疑い」を伴うが、自分の欲求を起点に買う「ご褒美」は、ほとんど失敗しない——。EC事業者の視点では、ご褒美文脈での購買は返品・低評価リスクの小さい、満足度の高い取引になりやすいことを意味します。
本調査が示す「ご褒美ECの3原則」
① 日常性 — ご褒美はイベントではない
最多タイミングは「決まっていない/日常的」(44.3%)。ボーナス商戦や記念日に限定せず、通年で「自分用のちょっと良いもの」導線を常設することが有効と考えられます。
② モノ中心 — 体験はまだ”追加レイヤー”
モノ系92.7% vs 体験系23.4%。ご褒美訴求の主役は、引き続き「手元に届くモノ」です。体験系商材は、モノとの組み合わせ(例:グッズ+イベント)で文脈をつくる方が、現状の消費行動に合っています。
③ 低失敗 — 満足度8割・後悔1%
ご褒美購買は満足度が高く、後悔されにくい。レビュー不信の時代において、「自分で選んで自分のために買う」文脈は、信頼問題を迂回できる数少ない購買動機だと言えます。
EC事業者にとっての実務示唆
① 「自分用」文脈の商品棚・特集を通年常設する
ギフト特集は「誰かのため」が前提ですが、実際の需要の半分は「自分のため」です。「自分へのご褒美」「今週がんばった人へ」のような自分用文脈の特集・レコメンド枠を通年で設けることが、需要の取りこぼし防止につながります。
② 価格帯は「数千円のちょっと良いもの」を厚くする
ボリュームゾーンは5千円以下(61.1%)。通常品より少し上質な「プチプレミアム」ラインの品揃えが、ご褒美需要の受け皿になります。1万円超の自己投資層には、品質・体験価値を丁寧に語る商品ページ設計が有効です。
③ 性別×ジャンルで訴求を分ける
女性はコスメ・ファッション、男性はガジェット・趣味のモノと、ご褒美の対象は明確に分かれています。同じ「ご褒美」訴求でも、クリエイティブとジャンルはセグメント別に設計すべきです。
節約の時代こそ、「ご褒美」が動く
消費マインドが引き締まる時代、すべての支出が一律に削られるわけではありません。
当社調査が示すのは、節約意識と「自分へのご褒美」が両立しているという事実です。むしろ、日々の節約があるからこそ、数千円のご褒美が「自分を保つための小さな投資」として日常に組み込まれている——そう読み解くことができます。
当社(株式会社スポルアップ)では、自社リサーチによる属性別購買行動分析、ご褒美・ギフト文脈の商品訴求設計、セグメント別のレコメンド・特集企画支援など、データに基づくEC支援を行っています。「節約の時代に選ばれる売り場づくり」について、ご相談を承っております。
詳細レポートのご案内
本記事で紹介したデータをすべて収録した、ダイジェスト版レポートを無料配布しています。
- Q1〜Q5 単純集計(全体・男女別)
- 年代別・性別のクロス分析グラフ
- モノ消費×体験消費の構造分析
- ご褒美ジャンルの属性別比較
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調査・分析のご相談
EC支援案件における購買行動分析、ターゲット別の訴求戦略立案、自主企画リサーチの設計など、当社リサーチ部門による調査・分析支援も承っております。
調査概要
- 調査名:「自分へのご褒美EC」に関する調査 2026
- 調査期間:2026年6月2日
- 調査対象:全国 ECアクティブユーザー 男女
- サンプル数:n=500(男性250 / 女性250)
- 調査方法:インターネット調査
- 調査主体:株式会社スポルアップ Research Division
- ※Q2〜Q5は、ご褒美買い経験が「まったくない」と回答した89名を除くn=411がベース
補助参照データ:EC利用実態調査 2026(予備調査)/2026年3月18日〜30日/全国 15歳〜99歳 男女/n=6,000
※本記事に掲載のグラフ・データはすべて当社が独自に実施した調査に基づくものです。
※引用の際は出典として「株式会社スポルアップ調べ」を明記してください。
