中小企業がChatGPTを導入しても定着しない本当の理由

「うちもChatGPT、導入しました!」

その言葉を聞くたびに、私は心の中でこう続ける。
「……で、誰か使ってます?」

意地悪な質問ではない。本当に聞きたいのだ。なぜなら、ここ1〜2年で中小企業のAI導入率は急上昇しているのに、現場の体感として「ちゃんと使いこなしている会社」の数は、それに全然追いついていないからだ。

私は株式会社スポルアップでCFOをしている加藤と申します。コンサルティング会社という立場上、クライアント企業の経営者からAIの話をよく聞く。その中で、ある種のパターンが見えてきた。それをここに書いておきたいと思う。


目次

「ChatGPTを入れました」の正体

正確に言うと、こういう状態だ。

法人契約でChatGPT Plusを5アカウント取った。社内で「使っていいよ」とアナウンスした。研修もした(外部業者に頼んで、半日、3万円)。そしていま、月額課金だけが静かに続いている。

使っているのは、だいたい一人だ。しかもその一人というのは、元々自分でChatGPTのアカウントを持っていた人だったりする。

これ、笑えない話だと思う。いや、笑うべきかもしれない。笑わないと処理できない。


なぜ誰も使わないのか。本当の理由。

経営者はたいてい「うちの社員はITリテラシーが低いから」と言う。それは半分正しくて、半分は自分への言い訳だ。

ITリテラシーが低い人でも、LINEは使う。Instagramは使う。Uberも使う。使えないのではなく、「使う理由」が見えていないのだ。

ChatGPTを初めて触った人が最初に感じることを、私なりに再現してみる。

画面を開く。入力欄がある。カーソルが点滅している。
「……何を聞けばいいんだ?」

これが全てだ。

ChatGPTは「賢い何か」だということはわかる。でも、自分の仕事のどこに、どう使えばいいのか、誰も教えてくれなかった。研修では「こんなことができます」という話を聞いた。でも「あなたの仕事のこの場面で使ってください」とは言われなかった。

汎用AIツールの弱点は、その「汎用」という部分にある。何でもできるということは、何をすればいいかわからない、ということでもある。


「導入」と「活用」は別の仕事だ

私がここで言いたいのは、ツールの批判ではない。ChatGPTは本当に優秀だ。使いようによっては、一人の社員が抱えていた仕事を半分にできる。私自身、毎日使っている。

問題は、「導入」と「活用」が全く別の仕事だ、という認識が経営者に薄いことだ。

PCを買ってきて机に置いても、Excelは使えるようにならない。それと同じだ。

活用には設計が要る。どの業務の、どの場面で使うかを決める。「こう入力するとこう返ってくる」という体験を誰かが先に持つ。そしてその人が「おっ、これ便利じゃん」と思う瞬間を作る。この三つだ。

最後の「便利じゃん」の瞬間が特に重要だ。人間は一度「これは使える」と思ったツールを手放さない。逆に、最初に「よくわからん」と思ったツールには二度と近づかない。これは本能だ。


では、何から始めればいいか

結論を言う。

「全員に使わせる」ではなく、「一人に深く使わせる」から始めろ。

社内で一番好奇心旺盛な人間を探す。職位は関係ない。営業でも経理でも総務でもいい。その人に、自分の仕事の中でChatGPTを自由に使う時間を、週に2時間でいいので確保させる。

2週間もすれば、その人は何かを発見する。「議事録の要約がめちゃくちゃ早い」「クレーム返信メールのたたき台を出してくれる」「企画書のタイトル案を10個出してくれる」——何でもいい。

その発見を、朝礼でも、社内チャットでも、昼飯のついでの雑談でも共有させる。これが「最初の一撃」になる。

社内のAI活用は、トップダウンの号令より、一人の成功体験の伝播で動く。これは私が複数の企業で見てきた、本当のことだ。


最後に

「ChatGPTを入れたけど誰も使っていない」は、失敗ではない。まだ始まっていないだけだ。

ツールは揃っている。あとは、使う人間の側の設計をするだけ。それはテクノロジーの問題ではなく、マネジメントの問題だ。

そしてマネジメントの問題なら、解ける。

次回も、AIをめぐる「あるある」を、別の角度から書いてみようと思う。


株式会社スポルアップ CFO 加藤
AI・経営・数字まわりのことを、思ったことをそのまま書いています。

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この記事を書いた人

事業内容:EC支援・マーケティング支援・データ分析
代表は大手ECプラットフォームにおける実務経験を有し、役員は市場調査会社にてリサーチ業務に従事。実務とデータ分析の両面から企業の成長支援を行っています。

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