プレッシャー克服 最終話 意識したくないことから注意を逸らす

スポーツをする人の多くが悩まされたことがあるであろう、プレッシャーとの付き合い方について連載しています。今回は、プレッシャーによって体の動きを意識してしまうことを防ぐ方法を考えていきます。

前回「意識しないように」と考えることはむしろ逆効果だという実験を紹介しました。そこで考えられたのが、「意識したくないことから注意を逸らす」という方法です。

全く関係のないことに意識を向けさせてしまえば、体の動きに注意を集中させる余裕がなくなり、プレッシャーによる悪い作用を防げるという考えです。

これに従ってある実験が行われました。

その内容は、参加者にプレッシャーがかかった状態でゴルフのパッティングをしてもらうというものです。その際、半分の参加者はパッティングのみを、もう半分の参加者はラジカセから流れてくる英単語を聞き、事前に指定された単語が聞こえたときのみ声に出して繰り返すという課題を行いながらパッティングをしました。すると、英単語を聞く課題に取り組んだ参加者の方がパッティングをより正確にできたのです。

スポーツをすること、体を動かすことからあえて意識を逸らすことでむしろパフォーマンスが向上するということはこの実験で示されました。しかし、一般的な大会では、選手の近くに英単語が流れるラジカセはありません。この実験で使われた注意を逸らす方法は、あまり実践的ではない方法でした。そこで行ったのが筆者の実験です。

この実験では、意識を逸らす方法として、「1000から3ずつ声に出して引き算をする」というものを考案しました。この課題であれば、実際のスポーツ場面にも応用でき、かつ難しすぎて注意が散漫になりすぎることもありません。実際、この引き算を行いながらスポーツ(おはじきを使ったカーリングのようなもの)に取り組んだ参加者は、引き算をしなかった参加者よりも高得点を出しました。

注意を逸らすことでプレッシャーによる影響を防ぐという方法は、理論が正しければ、野球においてももちろん当てはまるはずです。だまされたと思って打席の中で引き算をしてみてはどうでしょうか。目に見えるほどとはいかなくても、プレッシャーによるあがり、パフォーマンスの低下を少しは抑えられるかもしれません。



参考文献:Personality and Social Psychology Bulletin

記事筆者:澤田 舜樹